『人間・失格 たとえばぼくが死んだら』から生きていることの素晴らしさを学ぶ
2015/02/28
![賽の河原](https://bright-magazine.com/wp-content/uploads/2015/02/20150227_0.jpg)
この世(現世)とあの世(死後の世界)の間に流れる川を三途の川と言います。
人が死んだとき、この三途の川を渡るとされています。
これは仏典に由来し、あくまで民間信仰のひとつでそんな川は実際に存在しません。
それでも、三途の川はこの国に生きている人間であれば必ずと言っていいほど誰もが出会う言葉です。
そして、三途の川にある河原を賽の河原(さいのかわら)と言います。もちろん、この河原も実際には存在しない、信仰上でのお話です。
この賽の河原では、小さな子どもが河原にある石をいくつも積み上げているそうです。
子どもが高く石を積み上げると、そこに鬼(餓鬼)がやってきて、その積み石を崩してしまう。そして、子どもは再び石を一から積み上げていく、するとまた鬼に破壊される・・・ということがこの河原で繰り返されます。
どういう意味?と思われるかもしれませんが、この子どもは親よりも先に死んでしまった子どもで、石を積み上げているのは死んでしまってできなかった親の供養をするためです。
石を積み上げて塔(ケアンと呼ばれる)を完成させることで、親の供養ができたということになるのですが、鬼が壊してしまい、一向に完成しない・・・そして塔が完成しない限り、三途の川を渡ることができないので子ども自身も成仏ができない、ということです。
つまり、賽の河原は親よりも先に死んでしまった親不孝の罪を償う場所なのです。
延々と鬼に壊され、完成しない塔は「親不孝して、簡単に成仏できると思うなよ!」という意味があるのでしょう。
このように古から信仰があるとおり、若くして命を落とすということはとても罪深いことなのです。
小学生や中学生が命を落とす、そんなニュースが飛び交う昨今。
誰かのSOSサインに気づけるようになるためにも、命の重さ、とくに若い人の命の重さについて考えたいと思います。
今から20年ほど前に放送された『人間・失格 – たとえばぼくが死んだら』というドラマのなかから命について語った1シーンを紹介します。
このドラマは、有名私立中学に転校してきた少年・大場誠が同級生や教師から凄惨ないじめを受け自殺をし、その父親が復讐をしていくという物語。
自殺した生徒の担任である森田千尋は大場誠のSOSのサインに気づけなかったと自らの未熟さを責め学校を去ることを決意します。そして、全校生徒の前で最後の挨拶をするシーンでそのメッセージは語られます。
自分を愛するように、友達も愛して!
大場誠君を殺したのは、ここにいるみんなです
あたしを含めて、直接イジメにかかわった人、からかうようにたきつけた人、見て見ぬふりをした人、知らなかった人、ここにいる全ての人が大場君を殺したんです。
![体育館](https://bright-magazine.com/wp-content/uploads/2015/02/20150227_1.png)
あなた達には実感がないんです。きっと生きている実感がないんです。
なにか大きなものに流されて、自分がなんなのか分からなでいるんです。
人間なのか、体の中に何色の血液があるのか、傷つけると痛みを感じるのか。
それが分からないあなた達は友達の体から赤い血が流れ、苦痛に顔を歪めて、孤独や絶望で表情を失っていくのを見てほっとするんです。
友達を傷つけることで、生きている実感を感じようとするんです
森田千尋の目には涙が溢れ、教師は生徒たちに「教室に戻れ!」と促した。
それでも、森田千尋はこう続けた。
みんなが生まれたことだけで、もうとても素晴らしいことなの。生きてることだけで素晴らしいことなの。
自分自身の存在に早く気づいて。素晴らしい自分の命と同じように、友達の命も素晴らしいことに気づいて
出典:『人間・失格 たとえばぼくが死んだら』野島伸司自分を愛するように、友達も愛して!
力なくうなだれ、涙を流し続ける・・・
「生きていること」はふつうのことか
当たり前のように生まれ、生きていくわけではないです。
命が宿っても、生まれてこない命があって。
大切に育てられた人がどこかの誰かに殺されてしまうことがあって。
自分自身が今日こうして生きていることがいくつもの奇跡の上にあることを忘れないでほしい。
そして、目の前にいる人も同じなわけです。
それでも、誰もが享受している「生きている」は誰もが手にしているから価値がないものだということにすり替わっていく。
日常では、もっと身近な問題があるから、今解決しなければならないことがあるから、考えなければならないことが多いから。
仕事とか、交友とか、流行とか、習慣とか・・・そうしたものがその重大な意味を遠くへ遠くへ追いやっていく。こうして「生きている」は変わっていく、価値のない薄いものに。
前進するのみの便利さから、メッセージは自分が発信したいときに発信され、受信したいときに受け取れるようになってきました。
さらに、受け取らないように拒絶することもできます。無理強いして「受け取れ!」ということはもうほとんどないです。
誰かのSOSを感知しづらくなってきたと思えるのです。鈍感になってきた。
まわりは言う、「なんでこうなるまで気付かなかったんだろう」と。
他人のまわりで起きている変化には敏感、といか結果がわかっているから言える。人間はそういう生き物だから。
それではダメなわけで。
まずは自分からはじめよう。今こうしていられることの素晴らしさを知ろう。
そして、その素晴らしさが誰のもとにもあるのだと。
みなさんはどのように考えるでしょうか。
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