「結婚のメリットって何ですか?」の質問へのベストな答え方は?
2021/12/23
フジテレビで放送されている「人志松本の酒のツマミになる話」。お酒を飲みながら、ダウンタウンの松本人志さんとゲストが悩みや失敗談、普段聞くこと(または言うこと)ができない話などで盛り上がるトーク番組です。
2021年9月24日に放送された回で、ゲスト出演されていたフリーアナウンサーの大島由香里さんが他の共演者に向けこんな問いかけをしました。
「なにが結婚のメリットなんだろう。真剣に聞きたい」
大島由香里さん自身も結婚の経験があり、2年前に離婚されています。
酒の席には、MCの松本人志さんを含め、さまぁ~ずの大竹一樹さん、三村マサカズさん、ゲストには前田敦子さんと離婚した勝地涼さんなど、結婚を経験された方々が。
「結婚のメリット」、たしかに聞いてみたい。芸能人は何と答えるんだろう。
さまぁ~ず三村さん「メリット、ない!」
MCの松本さんが結婚25年になるさまぁ~ずの三村さんに話を振り、発言に注目が集まります。
三村さんの答えは・・・
「メリット、ない!」
まさかの答えに凍りつきます。
さまぁ~ず大竹さんが「メリットっていう言い方も良くない」と言い出し、松本さんとさまぁ~ずさんは「損得じゃない!」と意気投合。
すると、松本さんが「デスティニー(運命)だよっ!」と言い始め、その後も結婚についてのトークは続きましたが、結局、大島由香里さんが納得する明確な答えが出ないまま別のテーマに。
(フジテレビューの記事で詳細を読むことができます)
おそらく視聴者も「結婚のメリットってなんだろう・・・」と考え、答えが出せないまま、その日眠りに落ちたに違いありません。
誤った方向へ議論を進めさせる「問い方のマジック」
筑摩書房の読み物サイト「webちくま」に、哲学者・教育学者である苫野一徳さんの「はじめての哲学的思考」という連載記事が掲載されています。
連載第6回では、「問い方のマジック」について書かれています。
「問い方のマジック」というのは「二項対立的な問い」のことを指し、苫野一徳さんは以下の問いを例にあげています。
「教育は子どもの幸せのためにあるのか? それとも、国家を存続・発展させるためにあるのか?」
あちらとこちら、どちらが正しいか?こういった問いはまさしく「問い方のマジック」で、どちらかが絶対的に正しいということはほとんどなく、とくに意味や価値に関してのことだとなおさらと述べています。
たしかに、教育は子どもの幸せのためでもあるし、社会のためでもあります。
どちらか?という問いは、ある一方は正しく、もう一方は間違っていると思い込んでしまい、誤った方向へと議論を進めさせてしまいます。
なので、みんなが納得する”共通了解”にたどり着くためには、問いそのものを変える必要があるのです。
たとえば、以下のように。
「教育は、どのような意味において子どもたちのためにあり、またどのような意味において国や社会のためにあるのか?」
答えを導き出すのに容易くはないですが、”共通了解”を生む議論をするには十分ではないでしょうか。
「地球で人間が生きている理由は何か?」この問いの落とし穴
こういった「問い方のマジック」は日常生活にうんざりするほどあふれ返っているとのこと。苫野さんはいくつか列挙してくれています。簡単な解説を付け加えて以下に示します。
人間は生まれながらに平等な存在か、それとも不平等な存在か?
(解説)
人間は平等か、否か。これは観点によって何とでも言えてしまう問題。アフリカのサバンナで丸裸で放置されたら、種としての人間の生存確率はみんなだいたい同じだが、経済社会・現代社会を生きる人間としては平等とは言えない。絶対的な答えを与えることはできないのだから、この問いをイエス or ノーの次元で議論するかぎり、堂々めぐりになってしまう。
なので、問いを次のように変えて、みんなで考え合うに値する問いにする必要があります。
僕たちは、お互いに何をどの程度平等な存在として認め合う社会を作るべきだろう?
そのほかにも、これまでみてきた二項対立的な問い(=問い方のマジック)ではないですが、こんな問いも。
この地球の中で、われわれ人間が生きている理由は何か?
(解説)
人間がこの世に生きる「絶対的」な理由を問うものであれば難しい問題。人が生きる絶対の理由を、私たちは知ることなどできない。この問いにこだわりすぎると、私たちの思考はどこにも行き着けない。
しかし、この問いも次のように変えれば、答えを出し合うことのできるものになります。
人間は、いったいどんな時に生きる意味や理由を感じることができるのだろう?
「結婚するメリットはある?」という問いは”ニセ問題”
冒頭に話を戻すと、「結婚するメリットってあるんですか?」という問いはまさしく「ニセ問題(苫野一徳さんは「問い方のマジック」のかかった問いを「ニセ問題」と言っている)」で、みんなが考え合うのにふさわしい問いに変えなければいけないのではないだろうか。
たとえば、就職面接の場面では既婚者であるということで「責任感がある」と捉えられ、有利に選考を進められた人はそれを「メリット」と考えるかもしれないですし、「独身」ではないということで安心感を得られたことを「メリット」と話す人もいるかもしれません。
また、日本はかつて皆が結婚する「皆婚社会」でした。国勢調査が始まった1920(大正9)年から1990年まで、生涯未婚率は5%以下で推移しています(『100年前の日本人が「全員結婚」できた理由』東洋経済オンライン)。
結婚が当たり前となっている社会においての結婚と、恋愛結婚が9割となった現代社会においての結婚とでは「結婚」そのものが持つ意味が異なることも考えられます。
よって、「結婚のメリットは何か?」の問いに対し、誰もに当てはまる絶対的な正解は導き出せないのです。
では、少しでも話を前に進め、ある一定の納得を得られる答えに近づくために問いを変えなければなりません。
- 「人はどんなときに or どんな状況で結婚のメリットを感じることができるか?」
- 「結婚と呼ばれる婚姻制度をつくった背景は?」
- 「婚姻制度がなくて困ることは何だろうか?」
こんな感じでしょうか。ただ単に「結婚した理由は何ですか?」は質問相手に対してするもので、その人なりの答えが返ってくることが想定されるので、「メリット」ではなく、シンプルに結婚した理由を聞くのも手なのかとも思います。
「結婚のメリットって何?」と聞かれたときの答え方
もし「結婚のメリットって何ですか?」と聞かれたときは、意地悪な気もしますが、「その問いは”ニセ問題”だね、質問を変える必要があるね」と答えてあげましょう(笑)。
今回の問いに関わらず、答えが導き出せない、みんなの考えがまとまらないなんていうときは、そもそもの問いが間違えていないか考えてみるのもいいかもしれません。
「はじめての哲学的思考」苫野一徳 |
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